「日の丸・君が代」強制訴訟

勝利報告集会開く・倉敷9条の会

 

    東京での「日の丸・君が代」強制訴訟で勝利判決が出たことを受けての報告集会が2006年12月16日(土)13時半から、倉敷労働会館で開かれました。
 会は倉敷9条の会主催で約60人が参加、東京都教委の思想良心の自由を踏みにじる暴挙の実態についてこもごも報告され、憲法擁護の運動の大切さについて語られました。
 会には東京都教委による「日の丸・君が代強制」が違憲だとして「処分をしないように」という予防訴訟の原告団事務局から川村佐和さん、また弁護団から川口彩子弁護士が参加、美女2人の競演のみならず、東京のひどい実態に終始緊張が続いた会になりました。

内心の自由に踏み込まれ、戦前の特高のような都立高校の実態

 まず、都立高校で教員をされている川村佐和さんは「2003年の10・23通達が出されてから、東京でどんなことが行われてきたのかということを報告したい」ときりだされ、次のようにこもごも語られました。
 「それまでは都立高校の卒業式は生徒と教員で創造的に計画され、まことに感動的な会が続いていました。それが、この都教委の通達では『正面に日の丸をかかげ、音楽教員が日の丸を演奏し、教職員は席で立って歌わなければいけない。そうしなければ罰せられる』というものでした。それで卒業式はがんじがらめになってしまいました。音楽の教員など、欠席しようとすると家にまでおしかけて連れてくるということになりました。音楽の教員にとって君が代を強制されることは、自分の一番大切にしていることに土足で踏み込まれるようなものだと語っておられました。」

 「実は私は日の丸・君が代についてはとくに嫌ではなかったのですが、教育を考えるとそれを強制されることは戦前に回帰することだと考えていました。学校の記念式典のとき、都教委から職員が6人も来て、誰が立たなかったのかをチェックして、本人にも確認しました。まるで戦前の特高のようだと思いました。ファシズムを体験したようでした。」
 「体調が悪い教員もいましたが、校長は当日休むなと言ってきました。」
 「あとで、立たなかったということで100人を超える教員に処分が出されました。この処分は最初は戒告でしたが、次第に減給などへと重くなっています。病気で休んだ人も『こんなときに病気になるのはおかしい。疑われる』と言われたり、式の前の日から吐き気が止まらなくなった人もいた。」
 「非常勤の人など、1度のことで解雇されました。2003年以降、それまで卒業生のものだった卒業式は、命令と脅しと服従と処分の場になりました。」
 「そのためあらかじめ10・23通達による被害を受けないようにということで裁判を始めました。やっぱり間違った命令には従えないということで、生徒たちにはもう君たちの担任は続けられないかもしれない・・と言ってから裁判をしています。」
 「都立高校もそれまで生徒に人気が良かったのですが、この2003年以降不人気で、再募集が必要になったりしています。」
 「今回の勝利判決のときみんな喜びが沸きあがったのですが、都教委は校長に対して『今までどおりやれ』と言っています。裁判も控訴され、従来にもまして厳しい状態が続いています。しかしこの判決をてこにして私たちは国に自由と民主主義を取り戻すためにがんばって行きたいと思います。」

 思想良心の自由を判決で認められて!

 後半は弁護団の川口彩子弁護士の報告でした。つい先年に岡山で司法研修をうけたばかりという若い美人の弁護士で、父上が都立高校の教員だったという経歴からも、この訴訟について岡山で報告する巡りあわせなのかな・・と前置きしながらの熱弁でした。
 「実はこの裁判は勝てるとは思っていませんでした。そのため判決が出ても、アー・・とちょっと放心状態みたいなことがありました。でもそのあとで染み出してきた感動は、今でも忘れることはできません。」と次のように語られました。

 「都教委の出した10.23通達は憲法19条違反(思想及び良心の自由は、これを侵してはならない)という主張と、教育基本法(不当な支配をしてはならない)違反であるという主張をしてきました。昨日教育基本法は改悪されてしまいましたが、憲法19条は生きています。戦前には人が思っていることに対してまで刑罰がありまして、それにたいしてこの憲法19条ができたのです。
 今の都教委は『内心は自由だが表に出ている態度では通達に従ってください』という。しかし行動での自由がないと思想良心の自由は意味がありません。戦後ずっとこういうことがおこらなかったので、あまり研究が進んでいない分野ですが、裁判所がちゃんとした判決を出してくれて素晴らしいことと思います。」
 「たとえばクリスチャンの先生がいて、君が代を讃えることは出来ないという人もいますし、日の丸君が代にはこだわらないが強制には教師として許せないと言うさっきの川村さんのような人や、ほかにもたくさんの立場や理由があって、その先生方の思いというのを裁判所にわかってほしいと、陳述書や書面をたくさん用意しました。裁判所もそういうのを認めてくれて、思想良心の自由をうたってくれたのは、大きな判決だと思います。

 裁判所は日の丸君が代の意義を認めながらも、式の妨害行為をしない限り、ただ立たないとかいうに対して懲戒してまで強制するのは、少数者の思想良心の自由を侵害していると言っています。日の丸君が代に反する意識を持つ人に対して不快感を持つ人もいるかもしれないが、それは受容すべきで、個々人の自由は認めるべきだとも判決が言っていることは、私の特に気に入っているところです。
 まだ高裁でどうなるかわかりません。気を引き締めて裁判を取り組んでいかなくてはならないと思っています。私たちの弁護団長は大正生まれですが『戦後60年で、今ほど精神的自由が国家権力から脅かされているときは無い』と言われています。
 今回の裁判は負けるかもしれないと思っていましたが、多くの人たちが気持ちを合わせると勝つことが出来ると思いました。なんとかわかりやすい言葉でみんなに語りかけながら、憲法を守る運動をやっていくことが大切だと思います。」

 このあとも質疑で、教員や生徒、保護者の力で作り上げてこられた都立高校が壊されてきた実態などもさらに報告されました。憲法9条を守る運動がいかに大切か!教育基本法が改悪された翌日の会場にみなぎった決意は参加者のみんなの決意となっていました。
 

 



 

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